連載

  記憶から消えない夢

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                                           富士山の写真は中学時代の同級生からの提供

あれは富士宮の雪道を迷った時のこと。
道を尋ねようにもお店は勿論、民家もなく困っていたところに牧場が。
しかし、まったく人の気配がせず、頭を垂れ夢中でお食事をしていた黒牛が3頭。
開き直って、車窓を全開にし、「すみませーん!!〇〇はどこですかー!?」と、
牛さんに声をかけたところ、絶妙なタイミングで頭を上げ、
「なぁに?」という感じでこちらを振り向いた。
その時の牛さんは、とても人間臭くて可笑しかった。
5年近く経った今でも、時折あの表情を思い出す。

そして、雪の中のエミュー。
emyu.JPG「エミュー使い?」と、錯覚するほど
エミューに慣れ親しんでいた女性を見かけた。
魔法をかけられたように釘付けとなり、
暫くその場から離れることができなくなってしまう。
あきらかに飼育係ではなく、ゲストである。
その光景が脳裏に焼きついていて、
イメージが膨らむはめに。
それを悪戯に文章に残したくて、
チラッとブログに書いたところ反響がよく、
「記憶から消えない夢」の、
ブログ内、なんちゃって連載がスタートとなる。

書き進めていくうちに、新たな展開が耳元で囁き始めた。
昔、夢中で読んだ平井和正のウルフガイシリーズの記憶が突如蘇り、狼が登場。
地球を汚染し続けているのは、勿論私も含め、狩猟民族以外の人間。
メディアで、「愛は地球を救う」という言葉を使ってしまっては
地球に申し訳ないという屁理屈なども私の脳裏にあるものだから、
狼に「汚染された人間など食わん。」と、語っていただくことに。

そして、写真にエッセイなど、
沢山の言霊をアラスカから発信していた、今は亡き星野道夫さん。
紹介される南東アラスカエスキモー、インディアンの魂一つ一つが琴線に触れ、
私を夢の中へ導いてゆく。

初めから出来上がっていたものではなく、突然脳裏に絵柄が出てくるものだから
アップ後にも誤字の訂正、推敲。
さらに簡単にプリントアウトし、一冊にまとめてみたものの、
表現など、気になるところが次々に出てきてしまう。
しかしHP依頼先のブログページが途中で変わったため、修正が不可能に。
仕方なく、新たに5冊ほど作成し配ったのだが、
読み返しているうちに再び推敲したい箇所が次々に現れる。
自己満足とはいえ、拘っているとキリがない。
それでも三度目の正直に着手しようと思っていたところ、

「3.11」

「記憶から消えない夢」は、津波で人類が滅亡してしまう。
何処よりも高いトーテムポールに登り、難を逃れ、
ワタリガラスとして変身を成し遂げる主人公。
エミューの森で、曼珠沙華に姿を変えた少女(後にワタリガラス)と共に
再び人類を創造するためにアラスカへ渡るというストーリー。
文章力は別として、自分自身この作品が気に入っていたので、
大事にしたいと思っていた。
しかし、内容が内容だけに、極々少数の「私も欲しい。」という声が上がっても、
小冊子を作成し直して知人に配ることに良心の呵責を感じ、
自己満足の再作成は没に。

「記憶から消えない夢」のハンドルネームは「てんくうの滝」
「滝」は、
富士宮に存在する白糸の滝の、虹の途切れない風景。
日常ではめったにお目にかかれない虹も、この場所は晴天であれば
虹が消えることがない。虹というのは私にとって非日常的なのに、
ここでは日常的なのだ・・なぜかそのことに頭が混乱しそうだった。
「てんくう」は、
丸の内ホテル、メトロポリタンのフレンチレストラン「TENQOO」。
27階から眺めた夜景。高層ビルに点滅する赤い光と、
大きなガラスに映し出されるビル群の虚像。
さらに、それらを眺めている自分までもが映し出された時、
その虚像の中にしっくり溶け込んでいた。
時には、上高地の明神池や奥蓼科の御射鹿池の
水面に写る自然界の虚像の前に佇む自分。
一方では、都会の中に佇む自分に懐かしさを覚え、
「このビル群も忘れられない風景」と、呟く自分。
そこには矛盾だらけの自分が存在する。

この解説も、以前ブログに書いた記憶がある。
かなり前のことだったと思うが、
その後の

「3.11」

忘れてはならない記憶となる・・・

                            ヘアケアマイスター 小澤利雄
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  「みっつのこぶをもつラクダ」 5

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とうとうオシトは、乾燥した砂漠の暑さに耐えられず、

息をひきとりました。

オシトの死を知り、町中の人々も、仲間のラクダも悲しみました。

 

その翌日、不思議なことに、オシトの体はさらに大きくなりました。

次の日も、また次の日も。

そしてどんどん大きくなり、とうとう山のようになりました。

 

やがて、体中から木や花が生え、

信じられないことに、

開きっぱなしの口からは、次から次へと水が溢れ出て、

滝となりました。

さらに、太陽に向け開脚した足の間が、

湖となったのです。

 

ロイカの人々は、

みっつのこぶをもつラクダ、オシトのおかげで、

永遠に水に不自由することなく、

幸せに暮らせるようになりました。

                          おしまい    

                                  コロンボス

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  「みっつのこぶをもつラクダ」 4

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ラクダのオシトにはどうすることもできません。

主人に連れられ、

このロイカを去ってゆくミサノワの後姿を見守るだけです。

 

とうとうミサノワは、オシトの視界から姿を消してしまいました。

オシトの目からは、次から次へと涙が溢れ、悲しみでいっぱいになりました。

 

すると、お尻に一番近い、みっつ目の

「悲しみのこぶ」が、膨らみはじめ、どんどん大きくなりました。

オシトは、こぶの重さに耐え切れず、バランスを崩し、

とうとう尻餅をついてしまいました。

足は開いたまま、お腹は太陽の方角を向いたままです。

体の大きなオシトを、ロイカの人々が起こそうとしても、

重くてピクリともしません。                 つづく

                           コロンボス

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  「みっつのこぶをもつラクダ」 3 

rakku3.jpgのサムネール画像

ある日この町に、旅人に連れられた美しいラクダ、ミサノワがやってきました。

オシトは、ミサノワの美しさに胸が高鳴りました。

ミサノワも、みっつのこぶをもつオシトの優しさに魅かれ、

二頭は、あっという間に、恋に落ちました。

ところが、ミサノワの主人は旅人。

その主人とともに、やがてロイカから離れなければなりません。

 

楽しく幸せな日々も、つかの間、

とうとうお別れの日がやってきました。

ミサノワは、オシトに最後の別れを告げると、

主人とともに南へ向いました。

ミサノワは別れを惜しみ、

何度も何度もオシトの方を振り向きました。   つづく

                                コロンボス

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  「みっつのこぶをもつラクダ」 2

raku.jpgのサムネール画像

オシトは、ロイカの人々のために、毎日一生懸命、水を運びました。

ロイカの人たちも、そんな働き者のオシトに感謝し、

食べ物をたくさん与えていました。

そのためか、他のラクダより、ふたまわりも大きな体をしていました。

 

オシトのみっつのこぶには、それぞれ感情が詰まっています。

頭に近いこぶが 「怒りのこぶ」

真ん中のこぶは 「優しさのこぶ」

そして、お尻に近いみっつ目のこぶは 「悲しみのこぶ」 でした。

オシトは心優しく、いつも真ん中のこぶが一番大きく膨らんでいました。

                           つづく           コロンボス

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  「みっつのこぶをもつラクダ」 1

daimei.jpg mitsukobu 1.jpg

                                                           コロンボス

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  知人からの感想を訊いて・・・



「時を刻むもの」に対し、友人の感想に自分との食い違いがあったため、
数人にリサーチしてもらった結果、やはり文章不足。
ファイナルと、解説に色付けをした。

コロンは前の時代でみどりさんのお母さんの恋人。
デートする時、みどりさんのお母さんは常にこの匂い袋を身に着けていた。
彼は前の時代でもこの香りに包まれていた。
時間の旅をする彼は、
「つぎのじだい」 に旅をした時は上高地のコロボックルに・・・
そこでみどりさんと出会い、奥深く眠っていた記憶が蘇っていく。
そして、再び肉体を置いて次の時代へ・・・
次の時代でも、みどりさんの娘のところへワープしてしまうことから
家系図を旅していると表現してみた。

何代も前に、時間の秘密を解いた時から科せられた旅。
「死」 を、その時代に置いていく肉体と表現するところに意味があった。
自分本位だけれど、万が一、自分が突然この世を去ることがあったとしても、
時間を旅しているのだと考えてもらうことにより、残された人たちは
少しだけ悲しみが萎え、早く立ち直ってくれるのではないのかと・・・
ブログを書いていく途中、父親の死を体験し、
それを自分に置き換えた時から 「死」 を 「時間の旅」 と、考えたくなり
いつのまにか
この 「時を刻むもの」 に、感情移入していきました。

               アダオブヘアー 小澤利雄 21年3月1日(日)


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  「時を刻むもの」について  解説



 ファイナル読んだ友人からメールで質問攻め。
全部プリントアウトして、仕事の移動中に一話から読み直したと・・・
こっ、こいつは深入りしていたのか (正直嬉しい) ・・・と、思いつつ
「読み手に考えてもらうのが狙いだよ。」・・・嘯いた。
 
コロンは前の時代でみどりさんのお母さんの恋人。
デートする時、みどりさんのお母さんは常にこの匂い袋を身に着けていた。
コロンは前の時代でもこの香りに包まれていた。
時間の旅をする彼は、
「つぎのじだい」 に旅をした時は上高地のコロボックルに・・・
そこでみどりさんと出会い、奥深く眠っていた記憶が蘇っていく。
そして、再び肉体を置いて次の時代へ・・・
次の時代でも、みどりさんの娘のところへワープしてしまうことから
家系図を旅していると表現してみた。

何代も前に、時間の秘密を解いた時から科せられた旅。
「死」を、その時代に置いていく肉体と表現することに意味があった。
自分本位だけれど、万が一、自分が突然この世を去ることがあったとしても、
時間を旅をしているのだと考えてもらうことにより、残された人たちは
少しだけ悲しみが萎え、早く立ち直ってくれるのではないかと・・・
 ブログを書いていく途中、父親の死を体験し、
それを自分に置き換えた時から「死」 を 「時間の旅」 と、考えたくなり、
いつのまにか
この、「時を刻むもの」に、感情移入していきました。

カムチャッカでクマに襲われた星野さんは、
アラスカの大学で射撃で優秀な成績を修めていたにもかかわらず、
食物連鎖を知りながらも、銃を持たずに自然界の中へ入り込んで行った。

星野さんの作品に触れる度に 「きっとどこかで生きている」 気がしている。
それは作品一つ一つに永遠性を感じるから。
だから時空を超えるストーリーで、自分の永遠性を気取ってみたかったし、
ファンである星野さんを登場させたかった。
 
上高地を舞台にしたのは、
以前、単独で奥上高地の横尾までの往復を日帰り強行軍。
車の運転往復500キロ、徒歩往復20キロ。出発から帰宅まで19時間近く。
口を開いたのは左岸ルートのハイカーにすれ違う際の挨拶と、
横尾休憩所の 「焼きそば下さい!」 と 「ご馳走様!」 のみ。
この時は股関節を傷め、最後は痛みに耐えながら歩いた。
そのときのあらゆる印象が絵柄の中に残っているし、
本当にコロボックルが潜んでいそうなところも・・・

涸沢までは行った事がなく、以前知人が涸沢で撮影した人物の後ろに、
UFOが写る写真を見たときは一瞬鳥肌がたってしまう。
見たことのないような青空の下、高地とあって相当のシャッタースピードが、
謎の飛行物体を偶然収めてしまったのではないかと、ドキドキした。
 
 絵空事の世界だけれど、ボス猿のヤース・メッチ・みどりさんも
自分にとって関わり合いのある人たち。
血の赤を白と表現したこともそれなりに意味を持つ。
だから 「時を刻むもの」 は書きながらも
常にフィクション、ノンフィクションが混沌としていた。

自己満足の世界をこんな場所でずうずうしく発信できるのは、
図太さ?からきているのでしょうか・・・どうかご勘弁を・・・

          アダオブヘアー 小澤利雄 21年2月21日(土)
 
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  時を刻むもの ~ファイナル~



地上に横たわる自分の体からは、白い血が流れていた。
その体に別れを告げ、体勢を整えた直後に上空から強い光りを浴びた。
眼を閉じても残像が残るこの青い光りは、自分がおこした光りだった。
そして涸沢で長老が乗った飛行物体のように
この地、そしてこの時から一瞬にして離れ、自ら意識を落としていく。
 
・・・気がついたときにはベッドの上。
小さな明かりで、
遮光カーテンやクロゼットなどを薄っすらと見回すことができたが、
一瞬、夜なのか昼なのか悩んだ。
誰かと会話をしたはずなのに、相手が誰なのか記憶にない。
部屋にはみどりさんの匂い袋が漂っていた。
パタパタ音のフェードアウトと共に、香りに包まれたまま
体の重さに耐えられず再び意識は失せていく・・・
 
仰向けのまま一晩このベッドに埋もれていたようだ。
眠りについたときとあきらかに違うのは
出窓の遮光カーテンが両サイドに縛られていること。
今は白いレースのカーテンが眩しく、部屋全体がはっきり見渡せる。
 
ベッド脇で見つけた時計に釘付けになったまま
ずっと上高地のみどりさんのことを考えていた。
再びパタパタ音が近づいてくる。
音よりも先に、
開いたままの部屋の扉からこぼれている廊下の照明が、気配を感じさせた。
そして目の前に立った人間の表情に涙腺がゆるんだ。
「みどりさん・・・」

「何寝ぼけているの?母の名を呼んだりして。
    ひどい寝汗ね。はい、タオル。体を拭いたら朝ご飯にしましょう。
新聞を取りに言ってくるから、先にお線香を上げてね。」

厚みのあるドアが閉まる音と共に、人間の気配が遠のいていく。
みどりさん似の女性も、匂い袋の香りを残していった。
「あの女性はみどりさんの娘!?
 この肉体はみどりさんの娘の・・・恋人か亭主ということになるのか!?」
重い肉体をゆっくり起こし、激しい頭痛と目眩に耐えながらも、
壁を頼りに厚みのあるドアとは反対方向に、ゆっくりと足を運ぶ。

居間奥の和室には、やや年齢のいった女性の遺影とお供え物。
そしてみどりさんの写真。
上高地、徳沢のベンチに腰掛けていた時、
ハイカーにシャッターを切ってもらったものだとすぐわかった。
さらにその横には、上高地でみどりさんがリュックから取り出した
手のひらサイズの木箱が方向を崩さずに並んでいる。
遺影がみどりさんであることに気づいた・・・

「みどりさん・・・」
お線香をあげながらみどりさんに詫び、蘇った記憶をみどりさんに報告した。
 
「僕は旅をしていた・・・時間を越えた旅人。
時間の秘密を知った者のみに許されるわけではない。
時間の秘密を知った者は、長きにわたりひと所にいてはいけないという
神の勝手な論法に支配されている。
 『つぎのじだい』も、みどりさんのお母さんに自分が書き残したメモだった。
  僕はどうやらみどりさんの家系図上を旅しているように思える・・・
  新たな肉体もみどりさんのサークルの中にいた。
      「つぎのじだい」に旅するときは、新たな肉体を得ることができるが、
  前の時代の体を、「死」という形で置いていかねばならない。
  僕はその度、誰かを悲しませることになる。
  許されることならば、旅を終えたい・・・
  時間の秘密を解くべきではなかった・・・」
 
 旅の途中で、一度だけ同じ時間の旅行者に出会ったことを思い出した。
彼は時間を戻る選択をし、太古を探るのだと。
彼が語ってくれた、カムチャッカ半島に置き去りにした体の名は「星野道夫」 
その名も、
「みどりさん」そして「時を刻むもの」と共に
再び眠る僕の記憶の中に永遠に刻まれていく・・・        
・・・おしまい
 
         蕗の葉下の住人 21年2月19日(水)

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  時を刻むもの 19



 
しばらく様子を見たが、
結局、その足ではとても涸沢までたどり着けないことを説得した。
「わかったわ、帰りは景色を楽しみながらゆっくりと歩きましょうね。」
思わず安堵のため息が出てしまった。
足の痛みを誤魔化すために、喋り通しで時間をかけ河童橋まで戻ってきた。
「みどりさんと過ごすと、時が刻まれるのってすごく早く感じてしまうんだ。」
「ええ、楽しい時は残酷なくらいにあっという間に刻まれてしまうの・・・
 コロン、私の唇に触れてみて。」
木製のテーブルに肘をつき、広げた手のひらの上にいた。
「こう?」
「手じゃなくてコロンの唇で・・・」
アイスクリームの甘い香り残る唇からは、小刻みな震えを感じた。
 
「コロン、私と一緒に帰らない?」バスに乗る直前、
しゃがみこんで靴の紐を締め直しながらみどりさんは言った。
「・・・もうすぐ長老がやってくる。」
「わかるの?」
「感じるんだ。」
「とても不安だわ、胸騒ぎがするの・・・」
「大丈夫。足、早く治るといいね。」
「ええ、ありがとう。
三日後の土曜日にまた来るから必ず、必ず元気でいてね。」
「うん、みどりさんに後悔させない様にするよ。」
バスに乗り込んだみどりさんの後姿に
自分の吐いた言葉に罪の意識を感じながらも、この地での別れを告げた。
 
心にぽっかり穴が開いたように、すべての気力を失せたまま
梓川の流れをぼんやり眺めていた・・・
 
陽が傾き、辺りが薄暗くなりかけた時だった。
後方に突然気配を感じ、立ち上がり振り向いた瞬間、
意識したわけではないのに自分の体が宙高く舞った。
まるで眠っていた本能が一気に目覚めたような瞬間だった。
両手を広げ、片膝を曲げた状態で仰向けに浮いている。
時の刻みがスローモーションへと移行し、
そのまま首を右にひねり下方を眺めると、
もう一人の自分に向け長老が杖を振りかざしていた。
額の割れた地上の体は、
ゆっくりと、苔むした木の上へ仰向けに倒れていく・・・
次号最終回予定

       蕗の葉下の住人 21年2月14日(土)

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